00愚者〜リスク管理の重要性、FX投資から学ぶ教訓編〜

タロットカード「愚者」
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午後の柔らかな日差しが差し込むリビングルームで、マヤはソファにだらしなく腰を下ろし、スマートフォンをいじりながら大きなため息をついた。

「はぁ〜。一億円ほしーー。」

デスクで書類を整理していた先生が、その声に気づいて振り向いた。

知的な眼鏡の奥から優しい眼差しを向ける。

「簡単よ。まず、20万円を用意します。」

マヤは驚いて目を見開き、ソファから身を乗り出した。

「え?20万円?はい、はい!」

先生は微笑みながら説明を続ける。

「毎月20万円を積み立てて全米株式インデックスに投資。

それを20年続ければ、一億円に到達するわ。」

マヤは頬をふくらませ、不満げな表情を浮かべた。「え〜先生〜。それ時間がかかりすぎなんですけど〜。

私は今すぐ一億円が欲しいんです!」

先生は軽くため息をつき、真剣な眼差しでマヤを見つめた。

「またあなたは急ぎすぎるんだから。

かの投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェットも、『ゆっくり金持ちになりたい人間はいない』と言っていたわ。

お金を増やすことに王道なし!

まずはあなたの場合、真面目に家計管理と向き合いなさい。

そして余剰資金を確保し積立投資を…」

しかし、マヤは先生の言葉を聞き流し、再びスマホの画面に目を落とした。

「ん〜、一億円。『一億円 稼げる』で検索っと…」

画面にはさまざまな情報が表示される。

「あ、おすすめ表示で本が出てきた。

『普通のOLがFXで一億円を稼げた理由』

『あなたもFXで一発逆転!めざせ一億円』

…この本を読めば私も、いちおくえん!!」

勢いよく立ち上がったマヤは、目を輝かせて先生に向き直った。

「先生、私今からFXの口座を開設します!!」

先生は驚きつつも冷静に答えた。

「またあなたは変に思い切りがいいんだから…。

確かに、FXではレバレッジが効くから、少額でも多額の利益を得ることもあるでしょう。

でも、反対にそのレバレッジが裏目に出れば、たった一度の為替変動で大きな損失を被ることもあるわ。

…あなた、一億円の負債を抱える覚悟はある?」

マヤは一瞬固まり、顔色を青ざめさせた。

「うっ…ないです。全然ないです。

でもでもでも〜。

先生、私知ってるんです。

FXにはスワップポイントがあるんですよね?」

得意げに説明を始めるマヤ。

「スワップポイントは、『異なる金利の通貨間でポジションを保持することで受け取れる差額』ってことは私も知ってます!

日本円は金利が低いから、ドルや他の高金利通貨と組み合わせれば、毎日スワップポイントをもらえるって聞きました!

それに、『今後円安傾向は続くでしょう』って聞いたことがあります。

ずーっと持ち続けていれば、毎日チャリンチャリンと小銭が入ってくるじゃないですか!

夢の! 憧れの!! 不労所得!!!」

先生は軽く笑いながら答えた。

「はいはい。そう言ってFXを始めた人を知ってるわ。」

マヤは興味津々で尋ねた。

「その人はどうなりました?」

先生は少し遠くを見るような目で語った。

「ドル円が161円から140円に円高になった結果、元手の50万円が20万円になった時点で決済し、FXのアプリをアンインストールしたわ。」

マヤは驚いて口を大きく開けた。

「うわ〜ヒサン〜。

小銭をコツコツ稼ぐつもりが、マイナス30万円になっちゃったんだ。カワイソ〜。」

先生は肩をすくめて微笑んだ。

「まぁ私なんだけどね。」

「せ、せんせーーーー!!!ヤンチャが過ぎますよ!!!」

マヤは思わず声を張り上げた。

先生はくすくすと笑った。

「ふふ。まぁ、良い経験だったわ。

ちょっと、この経験から得た教訓について、タロットカードに聞いてみましょう。」

そう言って先生はデスクからタロットカードのデッキを取り出し、丁寧にシャッフルしてから一枚引いた。

「出たのは、【愚者】のカードの正位置。」

カードをテーブルに置き、先生はマヤに向き直った。

「さぁ、マヤ。このカードから、今回の失敗をどう解釈する?」

マヤはカードをじっと見つめ、真剣な表情で考え始めた。

「えぇと、【愚者】の正位置は…。

『新しい始まりや冒険を意味するカードで、リスクを取ることや未知の領域に踏み出す勇気』の象徴です。

そしてこのカードは、自由で無邪気な行動を取ることで得られる可能性と、しかし同時にその行動に伴うリスクや警告も含んでいることを示してるんじゃないでしょうか?

つまり、リスクを恐れず新しいことに挑戦することも大切だけど、その先にある危険も理解しておかなければならないということですね。」

先生は満足げにうなずいた。

「その通り。今回のカードは、慎重さと大胆さのバランスを取ることを教えてくれているわ。

タロットは、新たな一歩を踏み出す勇気と同時に、しっかりとした計画とリスク管理が重要であると示唆しているのよ。

わかったら、家計管理に手をつけなさい!

まず最初に、支出を見直してムダを削減すること。

次に、余剰資金を先に確保して、毎月の積立投資に回しなさい。

これが資産形成の基本よ!」

マヤは少し考え込みながら答えた。

「支出の見直しと…積立投資かぁ…。

むむむ、一発逆転もナシ? 宝くじもダメ?

夢のドカンと大金もNGなんですか〜!?」

先生は微笑んで答えた。

「そうね、でもその堅実さこそが本当の勝ち筋なのよ。」

「えぇ〜…でもわかりました!」

マヤはため息をつきながらもうなずいた。

「とりあえず、家計簿アプリと、証券口座を開設するとして…。」

彼女はスマホを操作し始めたが、ふと画面に何かが表示される。

「…ん?

『最強の家計管理術!ポイントを貯めてお得に暮らす裏ワザ100選』…クリックっと!

あ、この方法でなら一億円に近づけるかも!」

先生は再び軽くため息をついた。

「マヤ、まずはムダなクリックをやめなさい!

今日は証券口座を開設するところまでやらないと帰さないわよ…。

せめてもの情けで、楽天証券かSBI証券かはあなたに選ばせてあげましょうね〜〜〜」

マヤは慌ててスマホを持ち直し、真剣な表情で画面を見つめた。

「ひえぇすみませーーん! すぐやりますー!」

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