4 皇帝〜無謀な挑戦を反省、成功への計画性を学ぶ編〜

タロットカード「皇帝」
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ある日の午後、マヤは自室でパソコンの画面に夢中になっていた。

最近のニュースで円高が進んでいることを知り、彼女の胸は期待で膨らんでいた。

「最近は円安が続いていたけど、だいぶ円高になってきたわね!」とマヤは独り言をつぶやいた。

「円高になると、海外の商品が安く買えるんだよね。つまり、同じ日本円でより多くの商品を買えるってこと!」

マヤの目が輝き始めた。

「円高といえば、中国せどり!」

中国せどりとは、中国のオンラインショッピングサイトで安く商品を仕入れ、日本国内で販売して利益を得る手法である。

為替レートが有利なときに仕入れることで、より高い利益を狙うことができるのだ。

彼女はさっそく中国の通販サイトを開き、商品を探し始めた。

「イヤホンが320円?安い!」

興奮した様子で彼女は計算を始めた。

「国内のフリマサイトで出品するとして、梱包材や箱を含めて送料が300円と計算しましょう。

もし1800円で売れたら、仕入れが320円で、販売手数料10%の180円と送料300円を引いて……。

1個あたり1000円くらいの利益かしら。」

彼女は電卓を叩きながら微笑んだ。

「100個売れたら10万円!?よし、100個買おう!」

さらに商品を探し続ける。

「こっちはスピーカーが600円……?

まとめ買いすればこれもお得に仕入れられる!

20個買っちゃお!」

「こっちはペンライトが100円〜?!

これも仕入れてみよう。

かさばらないし、100個買っちゃお。」

彼女は次々と商品をカートに入れ、その度に利益計算を繰り返した。

「うおおおぉぉぉーーーーー!!!!」

マヤのテンションは最高潮に達し、彼女は大量の注文を確定させた。

***

それから1ヶ月後。

マヤは大きな段ボール箱を抱えて先生の事務所を訪れた。

汗をかきながらドアをノックする。

「先生……。事務所にちょっと在庫を置かせてもらえませんか……。」

先生は彼女の姿を見て、驚いた様子で答えた。

「あらあら、これはまた大きな段ボールを持ってきたわね。どうしたの?」

マヤは困った顔で説明を始めた。

「実は、中国せどりをやろうと思って大量に仕入れたんですけど、在庫が部屋に入りきらなくて……。

リビングに在庫を置いたら、家族にも怒られてしまって。」

先生は少し首をかしげた。

「中国せどり?それは何かしら?」

マヤは少し得意げに答えた。

「中国の通販サイトで安く商品を仕入れて、日本で高く売るビジネスです!

円高になると、同じ日本円でより多くの商品を買えるので、仕入れコストが下がって利益が増えるんです!」

先生は理解した様子でうなずいた。

「なるほど、為替レートを利用したビジネスというわけね。

でも、どうしてそんなに大量に仕入れたの?」

マヤは恥ずかしそうに笑った。

「計算したら利益が大きく出たので、最初からたくさん仕入れた方が効率的かなって……。」

先生は深いため息をついた。

「中国せどり自体は悪くないと思うわ。

ただ、最初から大量に仕入れるのはリスクが高いわよ。

在庫を管理するスペースや販売計画はきちんと立てていたの?」

マヤは肩を落とした。

「いえ、あまり深く考えていませんでした……。」

先生は優しく微笑んで言った。

「しょうがないわね。向こうの棚が空いているから、そこを使っていいわよ。」

マヤは申し訳なさそうに答えた。

「ありがとうございます。

実はもうあと3箱あるんですが…。」

先生は目を丸くして声を上げた。

「こらこらこら!うちは倉庫じゃないんだから、もう置けないわよ!」

マヤは肩を落とし、困った顔で続けた。

先生は深いため息をつきながら言った。

「しょうがない。こっちの棚の中を片付けてくれたら、空いたスペースも使っていいわよ。

残りは諦めてレンタル倉庫でも借りてきなさい。」

マヤは感謝の気持ちで頭を下げた。

「ありがとうございます先生…。

つつしんで片付けさせていただきます。」

マヤは深く頭を下げた。

彼女はさっそく棚の片付けに取りかかった。

古い書類や雑貨を整理していると、中から古びた箱が出てきた。

「何かたくさん写真が入ってる……。」

マヤはその中の一枚に目を留めた。

「あれ、このおじいさんが椅子に座っている古い写真。

タロットカードに出てきそうな雰囲気ですね。」

先生は彼女のそばに歩み寄り、写真を覗き込んだ。

「【皇帝】のカードのことかしら。

皇帝の正位置では、権威や統制、計画的な行動を象徴するわ。

逆位置だと、独裁的な振る舞いや、頑固さ、過度な支配欲を意味するの。」

マヤは写真から何か重い雰囲気を感じ取り、身震いした。

「うっ、それを聞いたらなんかこの写真からひしひしとプレッシャーを感じます!」

先生は静かに微笑んだ。

「あらそう。実はこの写真は私の祖父なの。

昔は大金持ちだったけれど、無謀な事業計画で大失敗して数億円の借金を抱えたのよ。」

マヤは驚きのあまり声を上げた。

「えぇっ!そんな過去が……。」

先生は遠い目をして続けた。

「でもね、祖父は最後まで自分のミスを認めず、『俺の計画が悪かったんじゃない、世間が悪いんだ』って言い続けたの。

その結果、家族や友人もみんな離れていってしまったわ。」

マヤは静かに息を吐き、深くうなずいた。

「うわぁ……それ、まさに【皇帝】の逆位置そのものですね……。」

先生はマヤの目を見つめ、穏やかな声で言った。

「だからこそ、今回のあなたも、自分だけで決めるのではなく、しっかりと計画を立てて周りと相談するべきだったわね。」

マヤは恥ずかしそうに答えた。

「以後、気をつけます…」

先生は優しく微笑み、マヤの肩に手を置いた。

「ビジネスは計画性とリスク管理が大切よ。

私の祖父のような失敗を繰り返さないようにね。」

マヤは真剣な表情で答えた。

「はい、肝に銘じます!

これからはちゃんと計画を立てて行動します。」

先生は満足そうにうなずいた。

「それでいいわ。さあ、一緒に片付けましょう。」

二人は並んで棚の整理を続けた。

窓から差し込む夕日が部屋を暖かく照らし、マヤの心には新たな学びと決意が刻まれていた。

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