ある日の午後、マヤは自室でパソコンの画面に夢中になっていた。
最近のニュースで円高が進んでいることを知り、彼女の胸は期待で膨らんでいた。
「最近は円安が続いていたけど、だいぶ円高になってきたわね!」とマヤは独り言をつぶやいた。
「円高になると、海外の商品が安く買えるんだよね。つまり、同じ日本円でより多くの商品を買えるってこと!」
マヤの目が輝き始めた。
「円高といえば、中国せどり!」
中国せどりとは、中国のオンラインショッピングサイトで安く商品を仕入れ、日本国内で販売して利益を得る手法である。
為替レートが有利なときに仕入れることで、より高い利益を狙うことができるのだ。
彼女はさっそく中国の通販サイトを開き、商品を探し始めた。
「イヤホンが320円?安い!」
興奮した様子で彼女は計算を始めた。
「国内のフリマサイトで出品するとして、梱包材や箱を含めて送料が300円と計算しましょう。
もし1800円で売れたら、仕入れが320円で、販売手数料10%の180円と送料300円を引いて……。
1個あたり1000円くらいの利益かしら。」
彼女は電卓を叩きながら微笑んだ。
「100個売れたら10万円!?よし、100個買おう!」
さらに商品を探し続ける。
「こっちはスピーカーが600円……?
まとめ買いすればこれもお得に仕入れられる!
20個買っちゃお!」
「こっちはペンライトが100円〜?!
これも仕入れてみよう。
かさばらないし、100個買っちゃお。」
彼女は次々と商品をカートに入れ、その度に利益計算を繰り返した。
「うおおおぉぉぉーーーーー!!!!」
マヤのテンションは最高潮に達し、彼女は大量の注文を確定させた。
***
それから1ヶ月後。
マヤは大きな段ボール箱を抱えて先生の事務所を訪れた。
汗をかきながらドアをノックする。
「先生……。事務所にちょっと在庫を置かせてもらえませんか……。」
先生は彼女の姿を見て、驚いた様子で答えた。
「あらあら、これはまた大きな段ボールを持ってきたわね。どうしたの?」
マヤは困った顔で説明を始めた。
「実は、中国せどりをやろうと思って大量に仕入れたんですけど、在庫が部屋に入りきらなくて……。
リビングに在庫を置いたら、家族にも怒られてしまって。」
先生は少し首をかしげた。
「中国せどり?それは何かしら?」
マヤは少し得意げに答えた。
「中国の通販サイトで安く商品を仕入れて、日本で高く売るビジネスです!
円高になると、同じ日本円でより多くの商品を買えるので、仕入れコストが下がって利益が増えるんです!」
先生は理解した様子でうなずいた。
「なるほど、為替レートを利用したビジネスというわけね。
でも、どうしてそんなに大量に仕入れたの?」
マヤは恥ずかしそうに笑った。
「計算したら利益が大きく出たので、最初からたくさん仕入れた方が効率的かなって……。」
先生は深いため息をついた。
「中国せどり自体は悪くないと思うわ。
ただ、最初から大量に仕入れるのはリスクが高いわよ。
在庫を管理するスペースや販売計画はきちんと立てていたの?」
マヤは肩を落とした。
「いえ、あまり深く考えていませんでした……。」
先生は優しく微笑んで言った。
「しょうがないわね。向こうの棚が空いているから、そこを使っていいわよ。」
マヤは申し訳なさそうに答えた。
「ありがとうございます。
実はもうあと3箱あるんですが…。」
先生は目を丸くして声を上げた。
「こらこらこら!うちは倉庫じゃないんだから、もう置けないわよ!」
マヤは肩を落とし、困った顔で続けた。
先生は深いため息をつきながら言った。
「しょうがない。こっちの棚の中を片付けてくれたら、空いたスペースも使っていいわよ。
残りは諦めてレンタル倉庫でも借りてきなさい。」
マヤは感謝の気持ちで頭を下げた。
「ありがとうございます先生…。
つつしんで片付けさせていただきます。」
マヤは深く頭を下げた。
彼女はさっそく棚の片付けに取りかかった。
古い書類や雑貨を整理していると、中から古びた箱が出てきた。
「何かたくさん写真が入ってる……。」
マヤはその中の一枚に目を留めた。
「あれ、このおじいさんが椅子に座っている古い写真。
タロットカードに出てきそうな雰囲気ですね。」
先生は彼女のそばに歩み寄り、写真を覗き込んだ。
「【皇帝】のカードのことかしら。
皇帝の正位置では、権威や統制、計画的な行動を象徴するわ。
逆位置だと、独裁的な振る舞いや、頑固さ、過度な支配欲を意味するの。」
マヤは写真から何か重い雰囲気を感じ取り、身震いした。
「うっ、それを聞いたらなんかこの写真からひしひしとプレッシャーを感じます!」
先生は静かに微笑んだ。
「あらそう。実はこの写真は私の祖父なの。
昔は大金持ちだったけれど、無謀な事業計画で大失敗して数億円の借金を抱えたのよ。」
マヤは驚きのあまり声を上げた。
「えぇっ!そんな過去が……。」
先生は遠い目をして続けた。
「でもね、祖父は最後まで自分のミスを認めず、『俺の計画が悪かったんじゃない、世間が悪いんだ』って言い続けたの。
その結果、家族や友人もみんな離れていってしまったわ。」
マヤは静かに息を吐き、深くうなずいた。
「うわぁ……それ、まさに【皇帝】の逆位置そのものですね……。」
先生はマヤの目を見つめ、穏やかな声で言った。
「だからこそ、今回のあなたも、自分だけで決めるのではなく、しっかりと計画を立てて周りと相談するべきだったわね。」
マヤは恥ずかしそうに答えた。
「以後、気をつけます…」
先生は優しく微笑み、マヤの肩に手を置いた。
「ビジネスは計画性とリスク管理が大切よ。
私の祖父のような失敗を繰り返さないようにね。」
マヤは真剣な表情で答えた。
「はい、肝に銘じます!
これからはちゃんと計画を立てて行動します。」
先生は満足そうにうなずいた。
「それでいいわ。さあ、一緒に片付けましょう。」
二人は並んで棚の整理を続けた。
窓から差し込む夕日が部屋を暖かく照らし、マヤの心には新たな学びと決意が刻まれていた。

宅地建物取引士(宅建)、証券外務員一種、ファイナンシャルプランナー(FP)2級、簿記検定に合格し、17年以上にわたる資産運用の経験を持つ。
資産運用の経験を通じて、リーマンショックで一時的に資産を半減させるも、その後着実に資産を回復・増加させ、現在は運用資産を1000万円以上増加させた。
国内外の個別株、投資信託、ETF、国内外の債権、仮想通貨、クラウドファンディングなど、多岐にわたる投資商品を扱い、リスクを分散しながら安定した成果を上げている。
投資に加えて、複数の副業を通じて収益を得ており、読者にとって参考になる情報を提供する予定。