夕方、マヤは先生の事務所を訪れた。
窓から差し込む柔らかな夕陽が部屋をオレンジ色に染め、穏やかな空気が漂っている。
「あの〜先生。
実は、輸出せどりをやってみようと思ってはいるんですが…」
マヤは少し緊張した様子で口を開いた。
先生は顔を上げて微笑んだ。
「良いじゃない、輸出せどり!
私は副業の中では一番好きだわ。
どこで販売するの?eBay?」
「ええ、そうなんですけど…」
マヤは言葉を濁した。
「いいわよ〜eBayは。
eBayは世界最大級のオンラインマーケットプレイスの一つで、全世界190以上の国と地域に商品を販売できるわ。
特に、日本製品やアニメ関連の商品、古いレトロなアイテムは海外で人気があるの。
多様な商品カテゴリがあって、どんな商品でも見つけてくれるバイヤーがいるわよ。
さらに、プラットフォーム上でバイヤーとの直接やり取りを通じて、国際的な視点を広げることもできるから、ビジネススキルも磨けるのよね。
私も以前は、浮世絵やこけしなどの日本の工芸品を販売していたことがあったわ。
今は他にやりたいことがあるからやってないけど、輸出せどりはおすすめよ!今は円安だし!
海外のバイヤーとのやりとりは、日本とは違った雰囲気なのよね。
やたらテンションが高いというか…」
マヤは微笑みながらも、不安げな表情を浮かべた。
「やりたい…とは思っているんですが…」
先生は首をかしげた。
「思っているんですが?」
マヤは深いため息をついた。
「アカウント開設やら出金口座の連携やら送料設定が難しすぎて、めちゃくちゃハードル高すぎませんかっ!?」
先生はしばらく考えてから、
「…そうよね〜」と深いため息をついた。
「私こう見えて国語と英語が得意な文系なんです!
現在は事務職として働いていて、まぁまぁ法律的に難しい内容も仕事でやっているんですよ!」
マヤは力説した。
「だから、今回アカウント開設やら出金口座の連携やらも、参考サイトはいくつかあるので、できると思ったんです!
でも!メルカリならアカウント開設から出品まで簡単にできるのに、eBayだとそもそもアカウント開設が難しくて、出金口座の設定も難しすぎて、さらにそれの連携なんて、もう発狂しそうです!
送料設定なんて…、狂気の沙汰ですよ。
発送除外国の設定に至っては、もう吐きそう。
限界です。先生…やっぱり、私には無理です。
諦めたいです。」
先生は優しい目でマヤを見つめた。
「なるほどね…。確かにハードルが高いのは間違いない。
でも、それだからこそライバルが少なくて済む…と言っても、難しいかしらね。
ちょっと待っててね、コーヒー淹れてくるわ。
知人の旅行で2週間預かることになった、ハムちゃんを見て癒されてなさい。」
マヤは机の上に置かれた小さなケージに目を向けた。
「うわ〜ハムスターだ。かわいい〜。
回し車でグルグル走ってる〜」
彼女はハムちゃんが一心不乱に走り続ける姿を見つめながら、心の中でつぶやいた。
(すごいなぁハムスターは。
疲れたり目が回ったりしないのかなぁ。
ずーっとずーっとグルグルグルグル。
ハムちゃんはこんなに頑張っているのに、私はいまだにアカウント開設時点でつまづいているなんて…)
マヤは自分の無力さを感じ、目頭が熱くなった。
「お待たせ〜。コーヒー甘くしておいたわよ〜」
先生が戻ってきた。
「あらあら、マヤ、泣いてるの?」
マヤは涙を拭いながら訴えた。
「せんせ〜、ハムちゃんはこんなに一途に頑張ってるのに、私ときたらスタートラインにも立ててないんです〜。
私の存在意義なんて、ネズミ未満なんです〜」
先生はクスリと笑いながら、マヤの肩に手を置いた。
「あなたの良いところは、やると決めたらやるところでしょう。
今までも、何かを始める時はいつもハードルがあったけど、あなたはそれを乗り越えてきたじゃない。
今回も、絶対できるわ。
ほら、お守りに戦車のカードを貸してあげる。」
先生はタロットデッキから一枚のカードを取り出し、マヤに手渡した。
「戦車のカードの正位置は【成功に向かう力と意志】【困難を乗り越える力】を意味し、逆位置は【方向性を見失った行動】【過剰な攻撃性】を意味するの。」
マヤはカードを見つめて微笑んだ。
「先生〜、ありがとうございます!
そうですよね、証券口座を開設した時も、初めて投資信託を購入した時も、輸入せどりを始めた時も、こんな感じでした。
今回もなんとかやってみます!」
先生は力強く頷いた。
「その意気よ!戦車のように5、6人くらいペシャンコにしてやるくらいの気持ちで行きなさい!」
マヤは驚いて目を見開いた。
「先生!物騒すぎてちょっとドン引きです!」
***
マヤは先生との会話後、eBayでの輸出せどりに取り組み始めた。
彼女の部屋には、さまざまな日本製品やアニメ関連グッズ、レトロなアイテムが整然と並べられ、それぞれの商品が写真撮影のために丁寧に配置されていた。
数日後、マヤはついに初めての大量出品を果たした。
夜遅くまでパソコンの画面と向き合い、商品のリストを一つ一つ丁寧にアップロードしていった。
しかし、その数日後。
「アカウント停止になっちゃいました〜!
なんでなんですか〜!」
マヤは先生の事務所に飛び込み、泣きついた。
先生はお茶をすすりながら、「そういえば、以前評価が一定以下で大量出品するとアカウント停止になるという話を聞いたことがあったわ…。
今もそうなのね〜」とつぶやいた。
「eBayに、そんな謎ルールが…!?」
マヤは驚愕した。
「まぁまぁ、アカウント停止もそのうち解除されるわよ。
他のストアから商品を購入して、評価を集めましょう。
そして、購入から商品到着の流れを理解していきましょうよ」
「了解ですぅ…」
マヤは涙ながらに頷いた。
先生は優しく微笑み、「勢いが空回りしちゃったわね。
でも大丈夫。戦車のカードが示すように、困難を乗り越える力はあなたの中にあるわ。
じっくりと進めていきましょう」と励ました。
ハムスターのハムちゃんは、今日も頑張ってくるくる回し車を回していた。
宅地建物取引士(宅建)、証券外務員一種、ファイナンシャルプランナー(FP)2級、簿記検定に合格し、17年以上にわたる資産運用の経験を持つ。
資産運用の経験を通じて、リーマンショックで一時的に資産を半減させるも、その後着実に資産を回復・増加させ、現在は運用資産を1000万円以上増加させた。
国内外の個別株、投資信託、ETF、国内外の債権、仮想通貨、クラウドファンディングなど、多岐にわたる投資商品を扱い、リスクを分散しながら安定した成果を上げている。
投資に加えて、複数の副業を通じて収益を得ており、読者にとって参考になる情報を提供する予定。