正義〜暴騰の誘惑!感情に流されず、自分のルールを守る投資術編〜

タロットカード「正義」
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連日、「株価が暴騰、連日最高値を更新!」という見出しがニュースを賑わせていた。マヤはテレビの前で、そのニュースを食い入るように見つめていた。心臓が高鳴り、手には汗がにじむ。

「やった! 私の投資信託もきっと増えてるはず!」

期待に胸を膨らませ、スマートフォンを手に取る。投資アプリを開き、自分の資産状況を確認すると、評価額がいつもより大きく跳ね上がっている。

「すごい! こんなに増えるなんて…!」

思わずガッツポーズをし、喜びで顔がほころぶ。しかし、その喜びもつかの間、次々と流れるニュースの見出しが彼女の目に飛び込んできた。

「バブルの再来か? 市場の不安定さが増す」「今がピークかもしれない」「売るなら今がチャンス」

「バブル…?」

その言葉が頭に引っかかり、マヤの心は一気に不安で揺れ動いた。スマートフォンを握る手が少し汗ばんでくる。

「どうしよう…今売れば利益が確定するし、そのお金であれも買えるし、これも買える…でも、もっと上がるかもしれないし…」

頭の中で様々な考えが巡り、心の中で警報が鳴り始める。胸の鼓動が速くなり、冷や汗が背中を伝う。

「このままじゃ混乱しちゃう…先生に相談しよう!」

そう決心すると、マヤは急いで先生のオフィスへと向かった。

夕陽が差し込む先生のオフィスは、静かで落ち着いた雰囲気に包まれていた。窓からは街の景色が一望でき、室内にはアンティーク調の家具や観葉植物がセンスよく配置されている。テーブルの上には美しいタロットカードが並べられ、その傍らには香り高いハーブティーが湯気を立てていた。

「先生、ちょっとご相談があります!」

マヤはドアを開けると同時にそう言って、少し息を切らしながら部屋に入った。

「どうしたの、マヤ? そんなに慌てて。」

先生は穏やかな微笑みを浮かべ、マヤをソファに招いた。

マヤはソファに腰を下ろし、深呼吸をしてから話し始めた。

「今、株がすごく上がっているんです。でも、ニュースではバブルかもしれないって言っていて…今売った方がいいんでしょうか?」

先生は静かに頷き、テーブルの上のタロットカードに手を伸ばした。

「マヤ、あなたの投資スタンスは何だったかしら? 確か『月2万円を全世界株式インデックスファンドに積み立てる』だったわよね。」

「はい、そうです。でも今は特別な状況で…」

先生はデッキから一枚のカードを引き、それをマヤに見せた。カードには天秤と剣を持つ女神が描かれている。

「これは『正義』のカード。公正さとバランスを象徴するものよ。」

カードの女神は冷静な目で前を見据え、片手に持つ天秤は完璧なバランスを保っている。背景には深い青色が広がり、その中に金色の光が差し込んでいる。

先生はカードを指しながら説明を続けた。

「このカードは、感情に流されず、冷静で公平な判断をすることの大切さを教えてくれるわ。自分のルールや信念をしっかりと持ち、それに基づいて行動することが求められるの。」

マヤはカードを見つめながら、少し考え込んだ。

「でも…やっぱり利益を確定させた方がいいんじゃないかって思って…」

その声には迷いと焦りが感じられる。

先生は優しい眼差しでマヤを見つめた。

「市場は上がったり下がったりするもの。でも、あなたが決めたのは長期的な資産形成だったはず。短期的な利益を追うよりも、大切なのはその目的に向かってブレないことよ。」

「投資の世界でも、自分で決めたルールを守ることが法律みたいなものよ。感情に振り回されてはいけないわ。」

マヤは一瞬考え込み、突然立ち上がって指を突きつけた。

「異議あり! でも、先生、今は特別な状況です! 株価が暴騰しているんですよ! これは売るべきチャンスかもしれない!」

彼女はまるで法廷ドラマの主人公のように熱く訴える。

先生はクスリと笑い、落ち着いた声で返す。

「待った! マヤ、感情に流されるのは危険よ。市場は常に変動するもの。だからこそ、冷静な判断が必要なの。」

先生も指を立てて、対抗するような仕草を見せた。

マヤはさらに勢いづく。

「異議あり! でも、売って得たお金で…あれも買えて、これも買えるんです! 計算してみてください!」

彼女の目は輝き、頭の中には欲しいものが次々と浮かんでいる。

先生は再び「正義」のカードを掲げ、微笑みながら言った。

「証拠を提示します! くらえ!」

マヤは一瞬驚きつつも、その場の雰囲気に飲み込まれて笑顔になる。

「このカードが示すのは、公正とバランス。感情や一時的な欲望ではなく、最初に決めたルールを守ることの大切さなの。投資は法廷のように厳格でなければならないわ。」

マヤは少し恥ずかしそうに頭をかいた。

「…そうですね、先生の言う通りかもしれません。ルールを破って急いで売るなんて、感情的になりすぎてました。」

すると突然、マヤはにっこり笑って、再び指を突きつけた。

「でも先生、もし今売ったらそのお金でおしゃれなカフェで全部飲み物奢れますよ? 先生の好きなラテもね!」

先生は目を輝かせ、すかさず指を突き返す。

「異議あり! それならラテにスペシャルデラックス黒蜜クリームもトッピングしちゃうわよ!」

マヤはびっくりした顔で固まった。

「先生、それはさすがにカロリーオーバーですよ…」

先生は笑いながら肩をすくめた。

「うふふ、そんなドン引きした顔しないでちょうだい。いつものラテを頼むわ。感情に流されちゃダメだからね!」

二人は顔を見合わせて笑い出した。部屋には穏やかな空気が流れ、マヤの心の中の迷いも次第に消えていく。

「わかりました、先生! ルールを守って、冷静に投資を続けます!」

マヤは晴れやかな表情で答えた。

先生は満足そうに頷いた。

「それでこそマヤよ。『正義』のカードも、きっとあなたを応援してくれるわ。」

窓の外には美しい夕焼けが広がり、オフィスの中は暖かな光に包まれていた。マヤは深呼吸をして、心が軽くなったのを感じた。

「先生、本当にありがとうございます。なんだかスッキリしました!」

「いつでも相談に来てちょうだい。さぁ、お茶にしましょうか。」

先生は立ち上がり、ハーブティーのポットを手に取った。香ばしい香りが部屋に広がる。

「はい! 先生の淹れるお茶、大好きです!」

マヤは笑顔で答え、テーブルに並べられたカップを手に取った。

二人は穏やかな時間を共有しながら、ゆっくりと流れる夕刻のひとときを楽しんだ。

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