悪魔〜情報商材・高額コンサルの甘い誘惑に負けない!地道な自己投資編〜

タロットカード「悪魔」
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冷たい風が吹きすさぶ冬の午後、マヤは厚手のコートに身を包みながら、先生のオフィスへと急いでいた。彼女の心は期待と興奮で高鳴っている。新たな自己投資のチャンスに胸を膨らませ、先生に相談しようと決意したのだ。

オフィスのドアを開けると、暖かな空気とともに先生の穏やかな笑顔が迎えてくれた。室内は柔らかな照明に包まれ、心地よいアロマの香りが漂っている。壁には美しい絵画やタロットカードが飾られ、落ち着いた雰囲気が漂っていた。

「先生、儲けるためには自己投資が必要ですよね?」

マヤは瞳を輝かせながら問いかけた。頬は寒さで赤く染まり、息を弾ませている。

先生は一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに落ち着いた声で答えた。

「…まぁ、基本的にはそうよ。一部の例外はあるけど。」

マヤは嬉しそうに続けた。

「そんなわけで、20万円のコンサルに申し込もうと思ってまして! 『簡単に稼げる!Webデザインコース』です。『すぐに稼げるブログ作成コース(20万円)』とも迷ってるんですけど、両方申し込むと30万円になるんで、悩ましいところです…。」

先生は内心でため息をつきながら思った。(一部の例外の方が来てしまったわ…。)しかし、その感情を表に出さずに、穏やかな表情を保ったままマヤに向き直った。

「そのコンサルの宣伝文句、当ててみましょうか。」

先生は少し意地悪そうに微笑んだ。彼女の瞳には微かな警戒心が宿っている。

「『私でも簡単に稼げた! たった数日で月収〇〇万円! 初心者でもすぐに結果が出るノウハウ!』…こんな感じじゃない?」

マヤは驚いて目を丸くした。

「先生、もしかして私が見てたサイトを見ました? 一緒に申し込んだら友だち価格で半額なので、今日申し込みましょうよ!」

その瞬間、先生の表情が一変した。眉間に深い皺が寄り、目が鋭く光る。彼女は勢いよく立ち上がり、机に手をついた。

「喝ーーー!!!」

その迫力にマヤは思わず身をすくめ、背筋を伸ばした。

「人生で初めて喝を入れられました…。」

マヤは戸惑いながら先生を見上げた。すると、自分の額に何かが貼られていることに気づく。手で触れてみると、一枚のタロットカードが額に貼り付けられていた。

「なんですか、このひたいに貼ったカードは? キョンシーみたい。」

先生は厳しい目つきのまま、一歩前に歩み寄った。彼女の手にはタロットカードのデッキが握られている。

「このカードは【悪魔】よ。正位置では誘惑、執着、依存や欲望に縛られることを意味し、逆位置ではその束縛からの解放、目覚め、自己改善の兆しを表すわ。さぁ、正座しなさい。」

その声には有無を言わせぬ力があり、マヤは慌ててその場に正座をした。

「ハイ…(先生のお説教モードだ)」

彼女は心の中でつぶやき、緊張で手が少し震えている。

先生は深呼吸をし、少し落ち着いた声で話し始めた。

「副業で収入を増やすのは良いことだけれど、甘い言葉に乗って高額なコンサルに手を出すのは危険よ。確かに、初心者にとって何が本当に役立つか見極めるのは難しいわね。でも、こういう宣伝文句を見かけたら、疑ってかかるべきよ。」

マヤは神妙な面持ちで尋ねた。

「どんな宣伝文句ですか?」

先生は指を一本立てて説明した。彼女の目は真剣で、言葉に重みがある。

「例えば、『一日〇分で月収〇〇万円!』『誰でも簡単に稼げる!』『リスクゼロで確実に儲かる』なんてフレーズが並んでいたら要注意。こういった言葉は、初心者の不安を煽ってお金を引き出そうとしている証拠よ。」

マヤは少し考え込み、しかし納得できない様子で口を開いた。

「でも、宣伝文句に『一日たった10分で月収50万円!』って書いてありましたよ! 10分なら、家事の合間にもできるし、効率的ですよね?」

先生は眉を上げて問い返した。

「10分ねぇ…。で、その裏には『初月だけは3時間の講義動画を視聴してください』とか、『最初にサイト構築とSNSの拡散が必要です』なんて書いてなかった?」

マヤはハッとして、思い出すようにスマートフォンを操作した。

「あ、そういえば『成功するための基礎』とか『本気で取り組む心構えが大事』みたいなページがありました…。」

先生は静かに頷いた。

「そうよ。それで気づかなかった? 『一日10分』なんて、膨大な準備作業が終わった後の話。しかも、リスクが全然書いてないのも怪しいわ。」

マヤは眉をひそめ、不安げに言った。

「そ、そうなんですか…? でも、他にも『在宅で月収30万円稼ぐ秘密の方法!』って書いてあって…。家で稼げるなら安心じゃないですか?」

先生は少し呆れたようにため息をついた。

「秘密の方法って…。それ、誰もが知っていればとっくにみんなやってるわよ。見た目のキャッチーさに騙されてるの。で、内容を詳しく読んだら『まずは高額なセミナーを受講してから…』なんて流れじゃなかった?」

マヤは再び画面を見つめ、小さな声で答えた。

「う、確かに。『一度しか手に入らない限定ノウハウ』って書いてありました。限定って言われると、今すぐ申し込まなきゃって焦っちゃいますよね。」

先生は真剣な目でマヤを見つめた。

「限定という言葉で焦らせるのもよくある手口。情報が本当に価値あるものなら、誰にも教えずに自分だけで稼いでるはずよ。」

マヤは肩を落とし、ため息をついた。

マヤ「えっ、そ、そうなんですか…?でも、『在宅で年収1,000万円を実現する秘密のテクニック!』とも書いてありましたよ。家で稼げるなら、リスクないし、いいと思いません?」

先生「秘密のテクニックねぇ…。じゃあ、その秘密、誰が教えてくれるのか知ってる?」

マヤ「もちろん!『年収1,000万円を稼ぎ出した伝説のビジネスマン』です!しかも、期間限定で半額で教えてくれるって!」

先生「伝説のビジネスマン…。それで、その人、どこの誰で、実績をちゃんと証明できるのかしら?」

マヤ「あっ、プロフィールページがありました!…『名前は非公開ですが、多くのセミナーで活躍してきた超有名人!』って書いてあります!」

先生「それ、信頼性ゼロね。名前も顔も公開しないで、『秘密のテクニック』なんて言う人は、成功者というより、ただのセールスマンの可能性が高いわよ。」

「…じゃあ、『寝ている間に自動で収入が増える夢のようなシステム』っていうのはどうですか? 寝てるだけでお金が増えるなんて、夢みたいですよね?」

先生は軽く首を振った。

「寝ている間に収入が増える…ね。で、そのシステムを作るのに『まず高性能なパソコンを用意して、専用ソフトの導入費30万円!』なんて書いてなかった?」

マヤは急いでページをスクロールし、小さな文字を見つけた。

「え、そんなこと…。あっ! ページの下の方に『システム維持費がかかりますが、これは成功のための初期投資です!』って小さく書いてありました!」

先生は微笑を浮かべた。

「ほらね。寝てる間にお金が入るのは、その前に多額の投資とリスクを背負っているから。もし本当に寝てるだけで儲かるなら、みんな億万長者になってるでしょ。」

マヤはスマートフォンをそっとテーブルに置き、うなだれた。

マヤ「…でも、これもダメ、あれもダメって、じゃあ何を信じればいいんですか?!何も残らないじゃないですか!」

先生「残るわよ、一つだけ。」

マヤ「えっ?」

先生「それはね、『自分の実践』よ。高額商材の99%はゴミ、ただの夢を売ってるだけ。でも、自分で実際にやってみて得た経験と知識は、絶対にあなたのものになる。地道に努力して知識を積むことこそが、本当の『自己投資』なの。」

マヤ「…でも、先生、それって一番時間かかる方法じゃないですか?」

先生「そうね。でも、こう考えてみて。どんな情報商材も、最終的に成功するために必要だって言ってるのは何だと思う?」

マヤ「…努力、ですか?」

先生「その通り。だったら最初から、その努力を自分で積んだ方がよっぽど安上がりで確実でしょ?甘い言葉に振り回されて遠回りするより、地道に一歩ずつ進むこと。それが成功への一番の近道なのよ。」

マヤは顔を上げ、先生の目をまっすぐに見つめた。

「…やっぱり地道に頑張るしかないんですね。」

先生は微笑んで頷いた。

「そう。『楽して稼げる』なんて、ただの甘い夢。でも、夢を追い続けて気づくのよ。自分で積み重ねた現実こそが、本当の成功だってね。」

マヤは深く息を吸い込み、力強く答えた。

「わかりました。私、地道に頑張ります!」

窓の外を見ると、薄暗い空から小さな雪が舞い降り始めていた。静かな雪景色が二人の心を穏やかにさせる。

「気をつけて帰るのよ。また何かあったら、いつでも相談に来てちょうだい。」

「はい、先生。またお邪魔しますね。」

マヤは立ち上がり、深くお辞儀をしてオフィスを後にした。冷たい空気が頬を刺すが、彼女の心は温かかった。

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