月〜幻想の高利回り投資に潜むリスクを見抜く編〜

タロットカード「月」
  • URLをコピーしました!


冷たい夜風がマヤの頬をかすめ、薄暗い空に浮かぶ月がぼんやりと照らしていた。彼女は小さなカフェの席に座り、投資について考えを巡らせていた。

「最近、投資をし始めた金額分が投資元本割れしてる…。なかなか思うように利益が出ないな…」

マヤは手元のスマホをいじりながら、独り言をつぶやいた。もっと効率よく資産を増やしたいという焦りが、心のどこかにあった。

そのとき、突然SNSのメッセージが届いた。「元本保証で年利20%の高配当!今なら限定募集!」という広告が目に飛び込んできた。

マヤは驚き、思わずリンクをクリックしてしまった。サイトには、成功者たちの証言や豪華なライフスタイルの写真が並び、「あなたも夢を実現しましょう!」と書かれていた。

「すごい!元本保証で、そんなに高いリターンがあるなんて…」

マヤは心の中で興奮を抑えきれなかった。最近の投資での損失を取り戻したいという焦りが、この「簡単にお金を増やせる」魅力的な提案に飛びつかせたのだ。彼女は、これが正しい決断であるかどうかよりも、今すぐにでもこの話に乗らなければならないような気持ちになっていた。

そのときカフェのドアが開き、先生が入ってきた。先生は、マヤが興奮した表情でスマホを見つめているのに気づき、声をかけた。「マヤ、どうしたの?そんなに真剣な顔をして。」

マヤはスマホを見せながら言った。「先生、見てください!この投資、元本保証で年利20%もあるんですよ!」

先生は一瞬スマホの画面を見て、次の瞬間、大きくため息をついた。「ちょっと待って、マヤ。そんなに高い利回りで元本保証っていうのは、少し怪しいわね。もう少し詳しく見てみましょう。」

「えっ?怪しいって…?」

マヤは驚きながら尋ねた。

「例えば、その投資先の企業や商品がどういう仕組みで利益を生むのか、ちゃんと説明されている?誰もが納得できるような透明なビジネスモデルがあるの?」先生は質問を重ねた。

「うーん、そこまでは書いてないかも…。成功者の声や実際に儲かったっていう証言はたくさんあるんですけど…」

マヤは少し不安そうに答えた。

先生は優しく微笑んで言った。「それが詐欺師たちの手口よ。人の欲望や不安を利用して、現実よりも夢のような話を信じさせる。でも、月のカードが示すように、その光は本物じゃなくて、ただの幻なの。」

会話の合間に、先生はふと外の夜空を見上げた。「そういえば、今夜は満月ね。美しいけれど、その光は太陽の借り物。見る者を魅了するけれど、実体はないの。今のあなたの心の状態も、まるでこの月のようね。」

マヤもつられて外を見上げる。澄んだ夜空に大きく浮かぶ満月が、幻想的な光を放っている。その瞬間、マヤは何かが腑に落ちたように感じた。「確かに…きれいだけど、よく考えたら、本当に自分の光じゃないんですね。」

先生は語り始めた。「それに、あなたも投資をやっているなら、大体の適正な利回りがわかるでしょう?」

マヤは一瞬ハッとし、少し恥ずかしそうにうなずいた。「…そうですね、通常の株式投資やインデックスファンドで、年利5%から10%でもすごくいい方ですもんね。高配当も、3〜4%くらいが普通だし。元本保証で20%なんて、やっぱりおかしいですね。」

先生は頷きながら続けた。「そうなの。高いリターンを謳う投資には必ずリスクが伴うものよ。元本保証でそんなに高い利回りを約束するなんて、まずありえない話。」

マヤ「いやぁ〜自分のことは一旦棚に上げちゃうんですけど、こんなのにひっかかる人なんているんですかね?」

先生「(マヤ、あなた、随分心の中に良い棚持ってるわね。)

実際、ポンジスキームはかなり古典的な詐欺手法なの。1920年代にチャールズ・ポンジという人物が最初に広めたもので、彼の名前がそのまま手口の名前になっているのよ。それ以来、同じような手口が形を変えながら何度も繰り返されてきた。見破ることが難しいのは、初期の投資家に一時的に本当に利益を支払ってしまうから。そうすると、『実際にお金が戻ってきた!』と口コミで広まりやすくなるの。人々は自分の目で見たものを信じてしまうからね。」

「たしかに、そうですね…。信じている人が増えると、ますます信頼しちゃいますもんね。」

先生は続けて言った。「私の昔の顧問先の社長も、同じ手口に引っかかったことがあるのよ。その社長も最初は『これはいいチャンスだ』と思い込んで、のめり込んでいったの。何度も『社長、これは絶対ポンジスキームですよ』って忠告したんだけど、『他の人がこんなに儲けているのに、自分が乗り遅れていいのか?』という焦りがあったのよね。結局、数千万円も騙し取られてしまったわ。」

マヤは驚いた顔で聞き入っていた。「えええ!それって、本当に危ないものだったんですね!そんな大金が…。」

先生は頷きながら説明を続けた。「こういう人たちは、『他の人が成功しているのに、自分はなぜできないんだろう』という焦りや不安を感じているの。そして、周りの人が次々と成功しているように見えると、『自分もこのチャンスに乗らなきゃ!』という気持ちが強くなってしまう。どんなに怪しい話でも、『自分だけはうまくいく』と思い込み、現実のリスクよりも夢や希望を信じるようになるのよ。まさに、月のカードが示す幻想の中にいるような状態ね。」

マヤは少し反省したように言った。

「そうですね…。『ポンジスキーム』っておやつみたいで美味しそうな名前なのに、中身はめちゃくちゃ凶悪な詐欺ですね。」

「まあ、名前だけだと確かに美味しそうに聞こえるかもしれないけどね。

でも、甘い話には必ず裏があるものよ。特に投資の世界ではね。

月の光が幻想であるように、甘い話もまた幻想なのだから。」

先生は笑いながらマヤの肩を軽く叩いた。

マヤは笑いながら深呼吸をした。「本当に、先生に話してよかったです。やっぱりコツコツと着実にやるのが一番ですね。」

「その通りよ、マヤ。焦ることなく、着実に歩んでいくことが大切よ。」先生は穏やかな声でそう言って、再び優しく微笑んだ。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次