審判〜過去の失敗を活かし、賢く副業に挑む編

タロットカード「審判」
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秋の柔らかな日差しが窓から差し込み、先生の部屋を暖かく照らしていた。部屋には落ち着いた色調の家具が並び、棚には数々のタロットカードや占星術の書物が所狭しと並べられている。先生は机に向かい、新しいタロットカードのデッキを手に取り、軽くシャッフルしていた。

そのとき、ドアが静かにノックされた。

「どうぞ」

先生が声をかけると、マヤが少し緊張した面持ちで顔を出した。彼女は手にスマートフォンを握りしめ、心ここにあらずといった様子だ。

「先生、ちょっとご相談が…」

マヤは部屋に入ると、深いため息をついて椅子に腰を下ろした。

「実は、先日動画編集の副業に応募して、今その採用結果を待っているんです。採用されてほしい…!と思いつつ、でも、もし採用されたらされたで、ちゃんと納品までできるかわからないし、不安で不安で〜!」

彼女の声は少し震えていて、目には不安の色が浮かんでいた。

先生は穏やかな微笑みを浮かべて答えた。

「あら、マヤ。あなた、動画編集の仕事に挑戦するのね? それは素晴らしいじゃない。結果を待つ時間は、何かと心が落ち着かないものよね。でも、カードを引いてみて、少しヒントをもらいましょう」

先生はテーブルの上にタロットカードを広げ、丁寧にシャッフルし始めた。カードが擦れ合う音が部屋の静けさの中に心地よく響く。マヤは緊張した面持ちで先生の手元を見つめていた。

カードをシャッフルし終えると、先生は一枚のカードを引き抜き、テーブルの中央にそっと置いた。

「…出たわね、【審判】のカード」

カードには天使がラッパを吹き、人々が立ち上がる姿が描かれている。

「このカードの正位置は『再評価と新しいスタート』、逆位置は『過去に縛られた思考や、決断を先延ばしにすること』を意味するの」

先生は優しい声で説明した。

マヤはカードをじっと見つめ、少し考え込んだ。

「再評価…つまり、『前回の失敗をちゃんと見直して、新しいスタートを切る準備をしろ』ってことですかね?」

先生は満足そうに微笑んだ。

「その通り。過去の経験は宝よ、マヤ。それをどう活かすかが大事。計画を立てて、リスクを理解して進めれば、新しい成功の道が開けるわ。逆に、『また失敗したらどうしよう』と過去に囚われると、前には進めない」

そのとき、マヤのスマートフォンが軽やかな音を立てた。彼女ははっとして画面を確認する。

「あっ、結果が来ました!」

マヤの指が震えながらメッセージを開く。

「『マヤさん、動画編集の案件に採用が決まりました。早速、初回のプロジェクトに取り掛かってください。必要な機材の詳細はメールにてお送りします』って…!」

彼女の顔が一瞬で明るくなり、喜びが溢れ出す。

「やったー! 先生、私、採用されました!」

先生は自分のことのように喜び、拍手を送った。

「おめでとう、マヤ! 採用されるなんて本当にすごいわ」

しかし、マヤの表情はすぐに不安げなものに変わった。

「嬉しい…嬉しいんですけど、うまくいかなかったらどうしましょう!?」

先生は優しく彼女を見つめた。

「それじゃあ、さっき出た審判のカードを振り返ってみましょう。あなたの不安は、過去の失敗から来ているようね。思い当たる過去の失敗について教えてくれる?」

マヤは少し視線を落とし、申し訳なさそうに話し始めた。

「そうですね…。以前、中国から格安のイヤホンやスピーカーを大量に仕入れたんです。最初は『これ、絶対売れる!』って思ってたんですけど…全然売れなくて、うちの部屋はもう在庫だらけ。家族には『倉庫に住んでるのか』って言われる始末で…」

彼女は苦笑いを浮かべながら続けた。

「学んだことですか? うーん、『家族の反対は軽んじちゃいけない』ってことでしょうか。あと、100個のスピーカーを買っても、自分で使えるのは1個だなっていうこととか」

先生は微笑みながら頷いた。

「それも大切な教訓ね。でも、今回も同じように勢いで動いてるの?」

マヤは首を横に振った。

「いえいえ、前回はノリと勢いでしたけど、今回はもっと真面目に考えてます。例えば、使用する経費について、どのくらいの案件をこなせば経費分の費用を回収できるかも考えるようになりました。まぁ、数字を見ると頭がクラクラしますけど」

先生は感心した様子で言った。

「それはいいわね。大きな進歩よ」

そのとき、マヤのスマートフォンが再び音を立てた。

「メールで、機材のリストが書いてあるみたいです。必須のものと、任意のものがあって…えーっと…あ、やっぱり結構な額になりますね。これ、どうしようかな…」

彼女の顔に再び不安の影が差す。

先生は穏やかな声でアドバイスを送った。

「そうね、全部揃えるのは最初は無理しない方がいいわね。まずは最低限の機材だけ揃えて、案件をこなしながら徐々に増やしていくのがいいわ」

マヤは目を輝かせて頷いた。

「なるほど! 以前の仕入れの失敗も、1つの商品をいきなりたくさん仕入れずに、少しずつ仕入れて、徐々に種類を増やしていけば良かったかもしれませんね」

先生は笑顔で応えた。

「そう、副業は小さく始めて、だんだん大きくしていくのがコツよ。…そうそう、一応アドバイスなんだけど。動画編集にはモニターがあった方が便利なんだけど、買うのは1個だけでいいのよ? 『モニターが100個あっても使えるのは1個だけ』だから」

マヤは顔を赤らめて笑った。

「さすがに前みたいなことはしませんよ! ちゃんと必要な分だけにしますから!」

先生はおどけた表情で続けた。

「それならいいけど。審判のカードが教えてくれるのは、今までの経験から学んで、賢く進むことよ。焦らず、一歩ずつ。自分のペースで進めば、道は必ず開けるわ」

マヤは力強く頷いた。

「はい! 今回は計画的に行動します!」

窓の外を見ると、夕陽が美しいオレンジ色の光を放ち、街並みを優しく包んでいた。マヤの心も晴れやかになり、これからの新しい挑戦に胸を躍らせているようだった。

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